サプライチェーン成功のレシピを見つけたタイ味の素社

FMCG (Fast Moving Consumer Goods) メーカー、10 日分の在庫を削減し、会社全体でコラボレーションと可視性を向上

日本の大手食品会社の地域子会社「タイ味の素社」では、会社全体のコラボレーションの変革を決めたとき、サプライチェーンから着手しました。販売、物流、生産、購買の各計画を Anaplan で統合し、サプライチェーンの意思決定と六つの工場にわたるエンドツーエンドの可視化を改善した結果、在庫レベルを 10 日分削減できました。また、主要なサプライチェーンの指標を日々レポートすることで、アジリティが改善し、新たな成長への扉も開かれています。

「Anaplan で新しい業務の進め方を開発したことで、総在庫が 10 日分削減されたのです」
吉田宏氏、サプライチェーン マネジメント部長、タイ味の素社

10 日分

在庫レベルを 10 日分削減

毎日

正確に在庫要件を可視化

統合

販売、物流、生産、購買計画を統合し、サプライチェーンの意思決定をサポート


1908 年、東京帝国大学の池田菊苗教授は、多くの食品に含まれる「うま味」のもとを発見しました。 the それから 110 年以上が過ぎた今でも、池田博士の発見は、自身が設立した世界的な食品会社である味の素社に脈々と受け継がれています。味の素社はタイだけで、FMCG (Fast Moving Consumer Goods、日用消費財) 事業に携わる従業員を約 7,000 人擁し、タイ市場向けに年間約 24 万トンの調味料と 300 以上の製品 SKU を生産しています。

タイ味の素社のリーダーたちは、野心的な目標を達成するため、六つの工場での販売、マーケティング、物流、製造に関わるデジタル化とプロセス改善を行っています。「目標を達成するうえで最大の課題は、組織全体のコラボレーションです」と、タイ味の素社のサプライチェーン ストラテジスト、リッティロン・チャンコール (Ritthirong Chankol) 氏は話します (役職/肩書きは取材当時)。「私たちは、販売、在庫、生産間のプランニングを、メールやスプレッドシート、さらには電話を駆使して行っていました」 重要なデータは個々のチームや工場長が所有するスプレッドシートに保存されていたため、タイ味の素社のオペレーションを完全に把握することは難しく、データよりも経験や直感に基づいて意思決定が行われることもありました。
 

逐次の改善

タイ味の素社、サプライチェーン マネジメント (SCM) 部長、吉田 宏 氏がひきいるチームが、この状況の改善に取り組むことになりました (役職/肩書きは取材当時)。「このプロジェクトの目標は、誰もが会社全体のデータを見ることができ、迅速に意思決定を行えるプロセスを設計し、そのためのデータ プラットフォームを選択することでした」と、同氏は話します。吉田氏は、味の素は地域業務の独立性を支援する企業文化を持つことに注目して、プロジェクトに対する経営陣の支持を取り付けました。その上で、Anaplan を選び、タイにある味の素の 6 つの工場すべてに関わる SCM こそが、デジタル化の取り組みの基盤になると判断しました。

このプロジェクトには、IT ディレクターのプーワナイ・ペッサンガム (Poowanai Petchsanngam) 氏も参加しました (役職/肩書きは取材当時)。「IT 部門の仕事は、Anaplan での計算に使われるデータを抽出し、統合することでした」と、ペッサンガム氏は話します。これには少し手間がかかりました。というのも、ビジネス オペレーション システムや倉庫管理システムが拠点によって異なる、利用可能なデータが必ずしも SCM チームが必要とするものではない、すべてのデータがリアルタイムで入手できるわけではないという問題がありました。

こうしたデータの問題を解決すると、ソリューションの展開を的確に進められました。「工場が六つあったため、一気に展開することはできませんでした」と、吉田氏は振り返ります。「最初の工場で学んだことを、すぐに 2 番目の工場に適用するという具合で進めたのです」 コミュニケーションの問題も、技術的な問題と同じように、簡単には解決できないため、同氏は拠点ごとに熱心なインフルエンサーを募り、他の従業員を啓発し、やる気を刺激するようサポートしました。

このプロジェクト全体を通じて、Anaplan のパートナー QUNIE 社が、味の素社のチームをサポートしました。QUNIE Consulting Thailand 社のパートナー岡部修大氏は「タイ味の素社の SCM プランニングの変革が成功し、そのお手伝いができたことを嬉しく思っています」と述べています(役職/肩書きは取材当時)。

「QUNIE 社との仕事は、一般的な IT ベンダーとは違いました」と、リッティロン氏は振り返ります。「QUNIE 社は私たちのビジネスを理解し、どのようなソリューションにすべきかを決める手助けをしてくれました。その際に意思決定が必要な場面では、QUNIE 社はそれぞれの選択肢の長所と短所を提示してくれました。おかげでプロジェクト リーダーとして、自分たちの決定に自信が持てました」
 

全体的な効率の向上

The Anaplan SCM ソリューションは、すぐに目に見える結果をもたらしました。「販売計画、物流計画、生産計画、購買計画を統合する一元的なプロセスを定義でき、それぞれのチームでより適切なサプライチェーン プランニングの意思決定を行えるようになりました」と、吉田氏は述べています。「Anaplan で新しい業務の進め方を開発したことで、総在庫が 10 日分削減されたのです」 在庫の削減により、味の素社のキャッシュフローは改善し、倉庫の運用コストが減少しています。慎重に在庫を管理することは、工場の製品供給力の維持にもつながります。

Anaplan を使用することで、SCM チームは日々の需要と供給のバランスをとり、在庫切れの可能性を迅速に特定できています。「Anaplan を使って、生産計画を基に、非常に正確に在庫要件を可視化できます」と、リッティロン氏は話します。「毎日の在庫レポートを作成し、対応してもらう必要がある部署に連絡します」 この対応には、工場に生産量を増やすよう依頼したり、物流チームに工場から配送センターへ在庫を移動するよう依頼したりすることが含まれます。「これにより、サプライチェーン全体の効率が向上するのです」と、リッティロン氏は説明します。SCM チームはまた、Anaplan のデータを使用して、予測した供給制約や生産制約を基に、将来のオペレーション戦略を策定しています。
 

将来を見越した拡張性と柔軟性

プロジェクトを率いた吉田宏氏は、Anaplan プラットフォームの拡張性に感銘を受けています。「当初はサプライチェーン計画に焦点を当てていましたが、すぐに営業およびオペレーション計画にシフトしました」と、吉田氏は述べます。「最新のサプライチェーン計画に基づく収益予測と利益予測も確認したかったのです」 タイ味の素社の IT チームは、データの適時性と正確性を改善するため、会社の倉庫管理システム (WMS) やエンタープライズ リソース プランニング (ERP) システムとのデータ統合の自動化に取り組んでいます。

リッティロン氏は、これが会社の変化や成長に応じて会社をサポートできる、柔軟なプランニング ソリューショ ンを確立するという、タイ味の素社の目標に寄与すると話し、さらに次のように述べています。「サプライチェーン計画用の Anaplan のテンプレートは、当社のビジネス要件に合わせて簡単にカスタマイズできました。将来、新しい戦略や新しいサプライチェーン プロセスを開発する場合にも、Anaplan は新しいビジネス要件に適応できると思います」

コンベヤー ベルトで商品の仕分けをする味の素社の作業員
味の素の製品のクローズアップ写真