統合ビジネス プランニングが EV 市場の成長に対する自動車 OEM の対応に役立つ理由

関税からサプライチェーンの混乱まで、急速に変化する市場において IBP がどのようにレジリエンスとアジリティを高めるのかを紹介します。

Split image showing a man analyzing charts on a computer monitor alongside a red electric vehicle on a factory assembly line.

自動車業界は、ここ 1 世紀以上の間で最大の変革期を迎えています。規制強化、消費者需要、イノベーション競争を背景に、電気自動車 (EV) へのシフトが加速しています。世界的な EV 販売は 2024 年の 6,710 億米ドルから 2032 年には 1.9 兆米ドル近くまで 13.8% の年平均成長率 (CAGR) で増加すると予測されています(英語)。しかし、OEM は EV 生産を増やす一方で、非常に不安定な市場環境にも直面しています。原材料価格の変動、地政学的不確実性、関税の変更、サプライチェーンへの打撃など、混乱はもはや常態化しています。

米国だけでも、EV 市場は 2028 年までに 5 倍以上に成長すると予測されていますが、普及パターンは地域によって大きく異なります。Deloitte 社が最近実施した調査では、次に購入する自動車としてバッテリー方式を選ぶとした米国消費者は 10% 未満で、これは中国消費者の約 3 分の1 (英語) の値です。このように地域による差異があるため、市場に応じた柔軟なプランニング業務が不可欠です。

この複雑な環境では、統合ビジネス プランニング (IBP) はもはや「あればよい」ものではなく、戦略、運用、ファイナンスを連携させながら、情報に基づいた迅速な意思決定を可能にする中枢神経系であると言えます。

EV 成長の課題と地政学的ハードル

自動車メーカーは既に、混乱の瀬戸際に立たされています。消費者需要の変化から貿易摩擦の激化まで、電動化への移行は遠い未来のことではありません。事業全体にわたる積極的なコネクテッド プランニングが無ければ、こういった要因が瞬く間に収益の損失、在庫の滞留、あるいは競争上の損失へとつながりかねません。

電動化により新たな機会が生まれますが、同時に新たなリスクも生じるため、OEM はそれに備える必要があります。

供給の制約:
バッテリー セル、半導体、希土類元素はリード タイムが長く、少数のサプライヤーに限られているため、不足しやすくなっています。

不均一な需要シグナル:
EV の普及率は地域によって異なります。インセンティブ、インフラの整備状況、消費者の好みの変化(英語)などが理由です。

製品の複雑さ:
ICE、ハイブリッド、BEV ポートフォリオを並行して管理するには、投資、ツール、段階的な生産シフトを慎重に調整する必要があります。

貿易政策の不安定さ:
サプライチェーンが国境をまたいでいると、関税と規制の変動にさらされます。EU 炭素国境調整措置により、EU 域外で生産される部品のコストが 15% 以上上がる(英語)可能性があります。中国メーカーは海外事業を拡大しており、ときには現地生産によって関税を回避しています(英語)

EV 成長の課題と地政学的な変動は、もはや遠い脅威ではなく、既に事業運営に影響を与えています。OEM が優位性を維持するには、混乱が後退に転じる前に変化を早期に察知してリアルタイムで対応できるプランニング システムが必要です。

従来のプランニング業務が不十分な理由

多くの自動車メーカーでは、現在でもスプレッドシート、ERP モジュール、レガシー ツールを使用して、需要、供給、生産を管理しています。これまではこれらのシステムで安定した直線的なプランニング業務サイクルを回していましたが、現在の変化の激しい環境への対応に苦戦しています。データが分断されており、更新サイクルが遅く、部門間の可視性に制限があるため、需要の変化や、供給の制約、規制の変更に対する対応が難しいのです。混乱が生じると、意思決定よりも数字の調整に多くの時間を費やすことになります。

このような時代遅れのツールを使っていると、有意義な「What-If」シナリオの実行 (製品ライン、地域、市場環境の組み合わせに応じたトレードオフのシミュレーション) をする能力も制限されます。総合的な視点が無ければ、プランニング業務は事後対応的で、サイロ化された、整合性の取れないものとなり、多くの場合、収益の損失、過剰在庫、リスクへの対応の遅れにつながります。それとは対照的に、IBP を使えば、社内全体の人材、プランニング、データを連携させ、レジリエンスと成長の両方を支える、より迅速でスマートな意思決定が可能となります。

IBP がゲーム チェンジャーとなる領域

OEM で IBP が威力を発揮するのは企業全体の計画を立案するときであり、営業部門、サプライチェーン部門、エンジニアリング部門、ファイナンス部門を横断したリアルタイム コラボレーションを促進できます。EV の成長、関税の不確実性、運用のレジリエンスといった課題に単一のフレームワークでどのように対応できるのかを、以下に紹介します。

1. 包括的なシナリオ プランニング

2. 一貫した意思決定

  • 運用計画およびファイナンシャル計画に基づいた長期的な製品戦略を策定し、需要目標と利益目標に合わせて設備投資を行います。
  • 関税に応じた調達の変更がコスト予測と製造計画に即座に反映されるようにします。

3. サプライチェーンのレジリエンス

  • サプライヤー リスク スコアリングを計画業務に組み込むことで、生産停止になる前に弱点を特定して対策します。
  • 「プラン B」の調達と物流ルートをプランニング業務プロセスに直接組み込むことで、方針変更を数か月ではなく数週間で完了できます。

4. 利益を最適化した配分

  • バッテリーの供給数に限りがあるときには、調達可能な数の範囲で、利益率が高くなる (戦略的な) 車両構成を優先します。
  • さまざまな関税シナリオの下で、国内需要に対応した場合と利益率の高い市場に輸出した場合のトレードオフをシミュレーションします。

これらの機能が組み合わさることで、OEM は不安定な環境に適応するだけでなく、その環境で成功することができます。

実際の例

次のような状況を想像してください。AI を活用したリスク検知システムによって、上流の採掘遅延が原因で 15 か月後に炭酸リチウムが不足する可能性が警告されました。時を同じくして、EU で輸入バッテリー モジュールに対する関税が最終決定しました。

IBP を導入していると、次のことが可能です。

  • 国内でのバッテリー モジュール生産を加速させる、EV 発売順序を調整する、セル使用量の少ないモデルを増やすようにグレード構成比を再調整するなど、複数の対応をモデル化します。
  • 各決定が損益、生産キャパシティ、地域の市場シェアに与える影響を並べて確認します。
  • 縦割りの各部門が独自の試算を行って何週間もしてから行動するのではなく、経営陣が承認した部門横断的な計画に従ってすぐに行動します。

成果

IBP を効果的に活用している複数の自動車 OEM が次の報告をしています。

  • 意思決定サイクルの短縮 – ショックへの対応にかかる期間が数週間から数日に短縮されました。
  • 予測精度の向上 – 需要、供給、ファイナンスがうまく連動するようになりました。
  • 利益率の向上 – 市場環境に合わせて配分と調達を最適化できました。

しかし、まだ多くの OEM とディーラーが、連携していないスプレッドシートでプランニング業務をしており、アジリティとレジリエンスに制限(英語)を抱えています。EV の普及状況、貿易政策、サプライチェーン リスクが常に変化する世界では、IBP の導入で不確実性が競争上の優位性に変わります。 

IBP は OEM が混乱を乗り切るのに役立つだけでなく、アジリティが最も重要になる瞬間に利益を上げることを可能にします。


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