不十分なプランニングに潜むリスク: IBP が価値の取りこぼしを防ぐ仕組み


統合ビジネス プランニング (IBP) でムダなコストのかかるミスを回避し、効率性を高めることでビジネス レジリエンスを向上
タイタニック号は、どうして沈没したのでしょうか。直接の原因は氷山ですが、衝突は原因の一部でしかありません。全容を捉えるには、ちょっとした見落としや間違った判断が積み重なることで、恐ろしい結果がもたらされる可能性について考える必要があります。タイタニック号は当時最先端の技術を駆使した船舶でしたが、その設計と構造には、後の運命を決定付ける致命的な欠陥がありました。当時としては最高級の鋼鉄で建造されたものの、それを固定するために使われていたリベットは低品質のものでした。
この巨船を沈没させたのは、最初にできた裂け目ではなく、これらのリベットの破損だったのです。船の残骸が調査された結果、船体の半分近くを覆うように広がっていた一連の小さな穴 (ゴルフ ボールほどの小ささの穴もありました) の累積的な影響が致命傷であったことが明らかになりました。「この話とサプライチェーン プランニングに何の関係が?」と疑問に思うかもしれません。
サプライチェーン プランニングを策定する人も、それを実行する人も、価値の取りこぼしという問題があり、その主な原因にどのようなものがあり (過剰在庫、価格の設定ミス、需要の見逃し、製品の欠陥など)、どれほどの悪影響が損益計算書に及ぶのかということを、普通は理解しています。しかし、タイタニック号の話が示すように、価値の取りこぼしによる真の影響は、何か一つのことではなく、計画のプロセスと実施全体に広がる小さな漏れの累積的な影響となって現れます。
IBP について取り上げた過去のブログ記事では、IBP で従来型の S&OP プロセスを改善する方法や、ビジネスとサプライチェーンの危機に対抗する方法に注目しました。この記事では、IBP によって広がった視野で製品ポートフォリオとファイナンス部門のレベルでの戦略的意思決定を行うことで、ずさんなプランニングとヒューマン エラーという落とし穴を回避できることについて解説します。
価値の取りこぼし: 小さな失敗の累積的影響
価値の取りこぼしとは、プランニングと意思決定のプロセスにおける非効率性が原因で、潜在的な収益や利益が失われることを意味します。組織では、少数の目に見える問題は特定されても、そうでないものが見落とされてしまうことは少なくありません。価値の取りこぼしが複数の場所で生じている場合すらあります。いずれにしても、価値の取りこぼしは相互の連携が不足している計画プロセス全体のさまざまな場所で累積していきます。
計画のそれぞれの側面を個別の活動として扱うと、これらの見落とされた問題によって壊滅的な結果がもたらされる可能性があります。従来型のツールでは、セールス、マーケティング、ファイナンス、サプライチェーンの各部門が個別化されていることが多く、タイムリーな意思決定を行うためのコラボレーションが阻害されたり、金銭的損失やリスクの見落としにつながる死角が生じたりします。計画業務が統合されていないと、業務サイクルの全体にわたって小さいけれども複合的な価値の取りこぼしが生じ、最終的な収益にも影響が及びます。
IBP が右肩上がりのビジネスを支える仕組み
適切なツールを使用すれば、事業全体のデータを唯一の情報源に集約できます。そうすれば、リアルタイムのデータ統合、コラボレーション、アジャイルな意思決定を推進して、異種混交的なデータセットの集約や比較のために浪費される時間を減らせます。これは価値の取りこぼしの解消につながります。
IBP の主なメリットと、IBP が価値の取りこぼしの防止に役立つ仕組みは以下のとおりです。
マルチシナリオ プランニング: 機会とリスクを洗い出して先回り型で実行可能な対応を用意しておき、市場の変化、サプライチェーンの混乱、財務状況の悪化などの危機に見舞われたときでも、リソースを最適な状態で割り当てられます。
ビジネス レジリエンス: 実績や計画のギャップを特定し、対応する過程で速やかに方向転換し、戦略を再調整して価値の取りこぼしによる影響を軽減します。
データ キュレーション: すべての部門をつなげてデータのソースと種類の違いを超える唯一の情報源を提供したり、データのずれやシステムの断片化による価値の取りこぼしを減らしたりして、ムダなコストのかかるミスを回避します。
柔軟性と拡張性: 思いのまま柔軟に計画を策定できるツールを使用して、予期せぬ混乱にも滞りなく対応できるように計画プロセスを調整し、価値の取りこぼしの原因となる間違い、非効率性、機会損失につながりがちな硬直性を解消します。
コラボレーションと反復: 計画を反復検証し、さまざまな仮定をテストし、リアルタイムで調整することで、最終的に戦略的対応を改善し、サイロ化された意思決定や調整不足に起因する価値の取りこぼしの可能性を最小限に抑えます。
スピードと自律性: ビジネス主導のプランニングで迅速かつデータドリブンな意思決定を行い、遅延リスクを減らします。また、速やかに危機を回避できるようにして、対応の遅れや機会の損失から生じる価値の取りこぼしを防ぎます。
ローコード フットプリント: 新しいテクノロジーが使われることなく終わることも多い、技術的負債を抱え込むことなく、すでに所有している IT インフラに追加不要で連携するビジネス主導のツールを使用して、IBP の目標を達成できます。
IBP が最新ビジネスの秩序を保つ仕組み
Coca-Cola が安定性で損失を回避
買収後、Coca-Cola Beverages Northeast の収益は 3 億ドルから 12 億ドルに跳ね上がりました。適切な製品構成を適切な場所とタイミングで提供できるかどうかが成功を左右する企業で、突然、複数のチームにわたって計画を調整する必要が生じました。
「需要プランニング、生産プランニング、販売予測がすべて連動しているかどうか確認する必要があります。適切な計画を立てなければ、品切れの事態に陥り、最終的には売上を失います」と Coca-Cola で財務経理担当副社長を務めるジャスティン・コンロイ氏は述べています。
コンロイ氏は、「Anaplan を導入する前は、サプライチェーン、販売、ファイナンスと特定の測定基準、指標、ケース販売個数で一致することができませんでした。Anaplan 導入後、三つの領域が共通の唯一の情報源を持つことができました。Anaplan で気に入っている点は、非常に単純に聞こえるかもしれませんが、安定性です。変革の観点から、取引関係者の立ち位置からビジネス パートナーシップへと移行しました。Anaplan はその中核を担う存在です」とも述べています。
IBP について Coca-Cola と語るオンデマンド ウェビナーをご覧ください。
不安定な季節的条件を乗り超える Bayer
Bayer Consumer Health は、季節的な需要のピーク時に大きな課題に直面し、製品を届けるよりもデータをまとめるのに膨大な時間を費やすことも少なくありませんでした。
「シナリオ プランニングは、製薬業界では非常に重要なものです。たとえば、売上高を変更したり、商品を切らした場合、収益にどのような影響を与えるかを知る必要があります」と Bayer でデジタル リードを務めるロリ・マルトゥッチ氏は述べています。
マルトゥッチ氏とそのチームが Anaplan を選んだのは、シナリオ プランニングのために複数のシステムからデータを自動的に取り込むことができるからです。プロセスを Anaplan 上の S&OP アプリケーションに移行することで、プロセスがより速く、より詳細で、よりビジネスに適したものになりました。また、より優れた、より効果的な意思決定をサポートする正確な分析も可能になりました。
その結果、Bayer は手作業で行っていたデータの統合、連結、集積、その他の作業に費やしていた時間を年間約 1,000 時間、節約できました。
詳細については、Bayer のお客様事例をご覧ください。(英語)
計画外の不測の事態は起きるもの
タイタニック号の悲劇は、自信過剰と、さまざまなシナリオに対する備えの欠如に関する、おそらく現代世界で最も有名な物語です。現代のビジネス運営は、どんなに素晴らしいプランナーとデータ ソースを揃えていても、適切な IBP ツールで土台から調整しなければ失敗する可能性があります。計画業務への取り組みがサイロ化されていると、主に機能領域、データ、意思決定者、サプライヤー、お客様の狭間に発生する死角で価値の取りこぼしが起きる原因になります。
適切なツールで計画プロセスを統合できない組織では、日常的に価値の取りこぼしが起きますが、最悪のタイプの取りこぼしは、現在使用しているツールとプロセスの断絶によって見えなくなっているものです。
IBP に対するコネクテッド型アプローチを採用し、適切なソリューションを使用することで、不測の事態に備えたり、運用リスクを最小限に抑えたり、より弾力的なビジネス モデルを創出したりできます。長期的には、歴史の悲劇を繰り返さないだけでなく、持続可能な成長と成功のための道を開いてくれる強固な基盤を構築できます。
IBP がビジネスとサプライチェーンの目標の達成に役立つ仕組みを詳しくご紹介
IBP に関する専門的なガイダンスと業界固有のインサイトについては、以下のホワイト ペーパー集をご覧ください。