EPM とBIは何が違う?経営環境の変化の速い時代に必要な意思決定の手法を解説

AUTHOR

顧客ニーズや技術の変化、貿易・原油・為替の変動など世界経済の速い動きや、競合が激化する現代の経営環境下で勝ち残っていくために企業には、より迅速で的確な経営判断が求められています。EPM(Enterprise Performance Management)は、経営環境の変化の速い時代において必要とされる的確な意思決定をすばやく行えるように支援する管理手法のことです。EPMとは何か、EPMを導入するメリット、EPMに関連の深いBI(Business Intelligence)やCPM(Corporate Performance Management)、ERP(Enterprise Resource Planning)との違いについても解説します。

 

EPMとは?

EPM(Enterprise Performance Management)は、日本語では「ビジネス業績管理または企業業績管理」などと訳されています。EPMの定義や導入効果について紹介します。
 

EPMの定義

EPMとは、企業の業務プロセスを1つのプロジェクトとしてとらえ、プロセスの可視化と組織全体のプロセスの評価を標準化し、目標達成に欠かせないKPI(Key Performance Indicator)を設定して常にプロセスを監視することです。

企業内では、複数の部署でさまざまな業務プロセスが行われています。部署ごとの一つひとつの業務は、プロセスの可視化とその評価などは実施しやすいですが、組織が大きくなると細部まで監視することは困難です。また、それぞれのプロセスは管理方法も評価方法も統一されていないのが一般的です。その結果、「進捗が見えない、収支が見えない」状態になっていることが多く、効率よく事業目標を達成できていません。各業務プロセスを1つのプロジェクトとしてとらえ、可視化し、統一した評価基準で業績を管理すれば、どんぶり勘定を排除できて付加価値を最大にすることが可能です。
 

EPMの導入で期待できる効果

EPMの導入によって業務プロセスの監視やKPI管理を推進することで、以下の効果が期待できます。

  • 投資効率の高い経営の実現

業務プロセスに生じがちな過剰な投資や無駄な業務を削減でき、経営資源がどこに、どのように使われているかを把握できるのでリソースを適切に配分・管理することが可能です。その結果、投資効率の高い経営を実現できます。

  • 経営目標達成のための障害を早期発見・早期改善

一つひとつのプロセスを可視化できるため、どこでどのような事象が発生しているのか常に把握でき、問題点や課題の迅速な発見と抽出ができ、経営目標達成のための障害などを早い段階で改善できます。

EPMの導入が必要な背景・理由

企業経営に影響を与える環境の変動は速く激しく、また不確実性・複雑性・不透明性が増しています。そのため、将来の経営を予測することは非常に困難です。このような経営環境下で企業が経営目的を達成するには、意思決定のために必要なデータを迅速に収集・分析することが求められます。しかし、多くの企業では、意思決定に必要なデータは、事業部門ごと、さらにそのなかの業務プロセスごとに表計算ソフトで作成されていることが多いことから、データを集計し、分析をしようと思っても多くの時間がかかります。さらに、そのデータは、事業部門ごと、業務プロセスごとに異なる方法で管理や評価されており、データの意味や価値が異なることから分析しても業績の将来予測や、対策のための的確で効果的なビジネスシナリオを迅速に策定できないという大きな課題を抱えています。EPMを導入することでこれらの課題を解決できます。
 

EPMを導入するメリット・効果と解決できる課題

EPMを導入することで得られるメリットと効果は以下のとおりです。
 

EPM導入による5つのメリットと効果

  • 経営情報の可視化

現場で埋もれてしまっていたような事象をデータ化して、経営部門という企業の中枢に集め、事業のプロセスをモニタリングできる。
 

  • 経営判断の迅速化

データの収集と分析によるインテリジェンス化で、今、起きていることと次に起きることの把握、それに対する経営の対応という判断が迅速に行えるようになる。
 

  • 業務の進捗状況の把握

特に課題の抽出や問題点として把握するべき部分がなくても、常時すべての業務の進捗状況を把握できるので、期初のスムーズな立ち上がりから各期の終わりまで、進捗の遅れなどの事態が減少する。
 

  • 問題の早期発見と的確な対策の立案

事業のプロセスをモニタリングできることから、どこで何が起きているのか、その課題などについて随時把握でき、早期の問題箇所の発見と的確な対策を迅速に打てる。
 

  • 業務ノウハウの蓄積による効率化

過去の活動などについて成功事例やノウハウを単一のフォーマットで管理が可能なため全部門で共有・蓄積ができる。これにより、今後の業務遂行に全社の全部署でノウハウを活用し、業務を効率化できる。
 

EPMの導入によって解決できる企業の課題

5つのメリットと効果によって多くの企業が抱えている以下のような課題の解決が可能です。

  • 経営判断のために役立つ情報が迅速に提供できていない。
  • 業績改善につなげられる要因がわからずデータに基づいた的確な対策を立案できない。
  • 過去の実績管理しかできず、データから将来の経営戦略・戦術を練る議論ができない。
  • データの転記など手作業に依存する業務があり、時間がかかる、入力ミスが生じるなど業務が非効率である。
  • 業務ごとに管理・評価手法が異なるため、ノウハウが蓄積せず組織全体の能力が向上しない。
     

これらの課題は、放置していても事業に直ちに大きなダメージを与えることは少なく事業を継続していくことは可能です。しかし、企業は経営環境の変化に的確な対応をしていけない限り、長く生き残っていけません。企業は、ゴーイングコンサーン(Going Concern:継続企業)として企業活動が無期限に続くと仮定され、この仮定を前提に会計制度や企業の情報公開制度などの論理が構築されています。株主や従業員にとどまらず半永久的に継続するという社会的使命のためにも経営上の意思決定で誤った判断をしないようにする仕組みが必要です。
 

EPMとBI・CPM・ERPとの関係、違いについて

EPMと紛らわしい、また関係のある用語「BI・CPM・ERP」について解説します。いずれも経営上の重要なデータの収集やその活用方法に関する用語です。

BI(Business Intelligence)とは

BIとは、企業に日々蓄積されていく膨大なデータを分析し、その分析結果を経営意思決定に活用することをいい、それを支援するシステムを総称してBIツールと呼びます。BIツールとは、レポーティング、分析、オペレーションのモニタリングなどができる機能を装備し、情報ありきでその情報を戦略の立案や意思決定など経営判断に生かせるツールのことです。BIとEPMは、どちらもデータを活用して業務プロセスを最適化する点において大きな違いはありません。あえていえば、BIは「データの活用」に重きを置き、EPMは「組織としての業務の最適化」に重きを置いている程度の違いです。
 

CPM(Corporate Performance Management)とは

CPMとは、企業経営で起きていることを可視化し、問題点に迅速に対処するためのソリューションのことです。EPMやBPM(Business Performance Management)とも呼ばれることもあり、EPMとほぼ同義語です。
 

ERP(Enterprise Resource Planning)とは

ERPとは、部門ごとに別々に管理・処理していた基幹業務のデータのすべてを1つのデータベースで網羅的に一元管理できるソリューションのことです。例えば、1つの伝票処理で関連するすべての部門のデータに反映されるため、効率の向上、処理の迅速化、経営状態のスピーディな把握を実現します。ERPはEPMを実現するために使われます。EPMが「組織として業務を最適化するために業務をプロジェクトとして管理する」のに対して、ERPはEPMによる管理を効率的に実現するためにツールとして活用する関係です。
 

EPMで迅速で的確な経営判断を実施

グローバル化による競争の激化、少子高齢化による労働生産人口の減少など、経営に突きつけられている改革・改善すべきテーマはいずれも大きく、これまでの手段・手法では解決が難しいことも多くなることが考えられ、根本からの変革が求められているといえるでしょう。変化の速い経営環境下では、EPMを利用した迅速で的確な経営判断をしていくことが必要です。

Anaplanの経営管理・EPMソリューションセミナーをご覧ください。