先進企業におけるワークフォース プランニングの再定義

ワークフォースの在り方が進化する中で、従来のプランニング手法ではもはや十分ではありません。本セッションでは、デロイトのエキスパートが登壇し、変化の激しい現代のビジネス環境に対応するために、先進企業がワークフォース プランニングをいかに再構築しているかを語ります。人材戦略とビジネス目標をどのように整合させるか、データを活用していかに先を見据えた意思決定を行うか、変化に柔軟に対応できるプランニングの枠組みをどう構築するか、といった実践的な手法を学べます。人事、ファイナンス、オペレーション間のサイロを解消し、真に統合されたワークフォース プランニングモデルを構築するための、現場経験に基づく知見と確立されたアプローチをご紹介します。

デジレー・デスーザ 氏 0:00:10.4:

まず背景を整理したいと思います。私たちが目にしている外部および内部のディスラプターは、企業のプランニングや予測に影響を与えています。これはある意味当然の流れとも言えますが、本日のイベントでも明らかなようにテクノロジーにおける変化が多く見られます。チャーリーとアダムのセッションでは Anaplan の対応が紹介されました。金融サービス業界であれば、規制コンプライアンスも業界に大きな影響を与える要素です。それに加えて、市場の不安定さもあります。企業においてプランニングは、より柔軟かつアジャイルな対応が求められています。ポスト コロナの世界では社内要因も見直されています。適切なスキルを持つ人材を適切な場所に配置することが重要で、それを支えるにはワークフォース プランニングが必要です。これまでにも、テクノロジーのディスラプターと企業の生成 AI 活用について多く議論されてきました。今このような場で、生成 AI に触れないわけにはいきません。こうした機能を考えると企業は、AI モデルを活用することで、予測の精度を高め、大規模なデータ セットで実施が可能になっています。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:01:38.7:

Polaris の可能性についてもご紹介しましたが大量のデータを扱えるようになり、異なるデータを統合することでより深いインサイトが得られます。これらの予測やインサイトがビジネス プランニングに役立っています。機械学習によって、シナリオの実行やストレス テストの支援、資本の健全性確認や戦略的プランニングがより自動化され、柔軟な対応が可能になります。そして最後に重要なのがクラウドやデジタル技術への移行です。まさに Anaplan のようなソリューションがその代表例です。こうしたツールの活用によりリアルタイム データを活用した分析が可能になります。さらに、従来のバッチ処理によるレガシー環境から脱却できます。企業はリアルタイムでデータにアクセスでき、プランニングのサイクル時間も大幅に短縮されます。例えば、アレックスさんの専門分野である規制対応もその一例です。今後の規制変更にどう備えるかを検討する必要があります。例えばストレス テストや資本の健全性評価などです。そういった将来の予測に基づく資料を規制当局に提出しつつ外部向け予測と、社内向けのベースライン予測をどのように結びつけるかが重要になってきます。そして最後に触れたいのが市場の不安定さです。金利変動や貿易摩擦などが要因となります。こうした環境下では、企業はより俊敏に予測やプランニングを実施する必要があります。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:03:16.7:

ここまでが、外部環境の変化に関する主な要素でした。次に社内要因、つまりポスト コロナの状況です。企業はリソース配分の見直しを真剣に検討し始めています。最大のコスト要素の管理も見直されています。シミーさん、ワークフォース プランニングの観点からお話しいただけますか。社内のディスラプターがプランニングにどう影響しているかです。

 

シミー・メータ 氏 0:03:42.7:

こんにちは、シミー・メータです。デロイトにて、パートナーとして、プランニング領域を担当しています。Anaplan 活用に 10 年以上前から携わっています。ここ 5 年は様々な業界の組織と協働しワークフォース プランニングの変革を支援しています。クライアントからよく聞かれるのは、適切な人材を、適切なスキルで、適切な場所に、適切なコストで配置する方法についてです。シンプルとも複雑ともとれる課題です。様々なデータ ソースや部門間の連携が必要になり、それによって、企業はビジネス目標を達成し、超過することができます。ディスラプターの話に戻りますがそれはワークフォースにも影響を与えています。どの人材が必要か、いつ必要か、AI がどのように仕事を補完し、ワークフォースのあり方を変えるのかも問われています。この 5 年間で話をしたクライアントは、ワークフォースに関するコア プランニング機能に対してそれぞれ異なる目標を持っています。アプリケーションが提供する基本機能として多くの場合、年間予算編成が含まれます。長期を含む人員プランニングのプロセスもあります。

 

シミー・メータ 氏 0:05:02.5:

ただしクライアントと取り組む他のケースでは、例えば、デロイトが Anaplan と協力して提供しているものとしてどのスキルを、どの地域、どのコホートで、どの業種が必要かを考えます。このようなスキル ベースのワークフォース プランニングを行っています。別のクライアントではロケーション戦略に取り組んでいます。例えば、今後どこに新たな拠点を設けるのか、その地域に適したタレント モデルをどう確保するかを検討しています。一部の企業ではオフショア活用を進めようとしています。これがその企業にとってのワークフォース プランニングの定義です。また、他社では組織体制やオペレーティング モデルに焦点を当てています。例えば M&A や戦略的なプログラムがあります。それによって必要なワークフォースが変わったりスキル構成をシフトさせたり、必要とされるワークフォース自体が削減されることもあります。このように、ワークフォース プランニングの定義は非常に幅広いのです。オペレーション レベルの人員プランニングやワークフォース管理からより戦略的な目標まであらゆる範囲にわたります。ここで少しアレックスさんにも伺いたいと思います。一緒に取り組んだ Vanguard 社の事例をご紹介いただけますか。ワークフォース マネジメントに関する取り組みで顧客へのサービス品質を。維持するためのものです。それではアレックスさん、お願いします。

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:06:31.3:

こんにちは。アレックス・マケルウィーです。私は Vanguard の個人投資部門に所属しています。現在は Anaplan モデル構築チームを率いており、最初のユース ケースとしてワークフォース プランニング モデルを担当しました。数年前に機能を強化し、最新化する取り組みを開始しました。その中で直面した課題についてお話しします。1 つ目は、手作業が非常に多かったことです。2 つ目は、コンタクト センターの複雑化が進んでいたことです。先ほど少し話題に出たものです。まずプロセス自体が完全に手作業で、分析担当者は自ら作成した。Excel モデルを頼りにしていました。それぞれのモデルは担当者ごとに違い時間とともにカスタマイズが進んでいました。そして、そのメンテナンスにも多くの時間が費やされていました。また、週次、月次、四半期ごとのレポートを Excel や PowerPoint で作成していました。複数のダッシュボードからデータを収集しモデルに手動で入力していました。このようにプロセスは非常に手作業が多く時間のかかるものでした。そして手作業である限りリスクも発生します。数値の転記ミスや入力ミスなどの小さなミスが大きなミスを引き起こす可能性もあります。

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:07:56.6:

これが最大の課題でした。次に、コンタクト センターの複雑性についてです。当社の既存のチャネルは細分化され専門化が進んでいました。新たにチャットやメールといったチャネルも追加されました。さらに、契約社員やオフショア BPO など人材タイプも多様でした。しかしプロセスが手作業だったため、変化への対応が追いつきませんでした。一貫した方法で対応するのが難しく個人投資部門全体で一貫した。ストーリーを構築するのも困難でした。アダムさんが先ほど話していたようにエンドツーエンドのアーキテクチャを考えることが重要です。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:08:29.1:

Vanguard にとってもそれは、大きな検討事項でしたよね。最初のユース ケースとしてワークフォース プランニングに取り組んでいましたが、ツールをより広いエコシステムの中でどう活用するかについてどう思われましたか?

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:08:47.1:

データの課題を抱えていたので、社内での対応から始めました。社内のデータと分析部門と連携し課題の解決に取り組みました。レポートが全体に分散しておりその管理に多くの時間を要していました。そこで、まずはそれらを統合することにしました。AWS S3 を活用して主要なオペレーション メトリックスをまとめてワン ストップで見られる環境を構築しました。しかし、そのデータを活用するモデルも必要だと分かっていました。そこで、利用可能な選択肢を検討しました。調査の結果、多様な選択肢がありました。例えば、ワークフォース プランニング向けに構築された商用パッケージ製品は導入が早く、コストも比較的低めでした。ただし カスタマイズできず決められた仕様のまま使う必要がありました。変更にはメーカーへの依頼が必要でした。ワークフォース プランニング専用で用途が限られており、他用途への拡張が難しかったため当社の要件には合いませんでした。一方で、独自にカスタム モデルを構築するサービスもありました。それらはコード ベースで、拡張には常にメーカーを介する必要がありました。当社アナリストは、分析力はありますがコーディング経験はありません。そのため保守には大幅なスキル転換が求められました。

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:10:08.9: 

よってカスタム モデルにも魅力をあまり感じませんでした。そして、両者の中間にある理想的な選択肢にたどり着きました。それが ローコード/ノーコード型のプラットフォームです。Excel の知識があったため自社で運用できると判断しました。導入期間もコストも中程度で収まりました。当社にとってそれが最適な選択だと判断しました。こうして最終的に Anaplan にたどり着いたのです。当社には Excel のパワー ユーザーが多く、Excel に似た数式にも魅力を感じました。将来的にこのツールを自社で運用する明確な道筋が見えました。また、ワークフォース プランニングの枠を超えて拡張できる可能性も見えました。Anaplan が特に印象に残りそして最終的にはデロイトと連携してAnaplan モデルの実装を行いました。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:10:57.2:

すばらしいですね。その実装を進めている中で、業務プロセスへの影響についてはどのように考えていましたか?

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:11:04.6:

もう一度お願いします。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:11:05.6:

実装を進める中で、ツールの導入だけでなく業務プロセスの変更についてもどのように考慮されましたか?

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:11:14.1:

運用は社内で完結させたいと当初から考えていました。それが Anaplan を選んだ大きな理由の 1 つです。Excel に似ているとはいえやはり大きな移行でした。そのため、実装支援のパートナーと連携しAnaplan のパワー ユーザーを集めてモデルの構築を進めました。これは同時にトレーニングの機会でもありました。将来的に自社で運用できるようスキル向上を図りました。その後、並行期間を設けスキル定着を図りました。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:11:44.7:

運用モデルに関しては、実装後の維持方法が課題となります。また、維持体制の確保も重要です。シミーさんから見て他社の Anaplan 活用事例における運用モデルの転換について、ご意見を伺えますか?

 

シミー・メータ 氏 0:12:05.4:

アレックスさんも少し触れていましたが、成功しているクライアント企業は、プロセス オーナーのチェンジ マネジメントをプロジェクト初期から進めるだけでなく、稼働後の運用モデルにおけるチェンジ マネジメントと有効化もプロジェクト初期に着手することが重要です。アレックスさんのチームと取り組んだ際と同様に多くのクライアントでは、初期実装に技術トレーニングを組み込んでいます。12 週間のアプリ展開でも 4〜5 か月のカスタム開発でも共通です。これは Anaplan プラットフォームに触れる絶好の機会で当社のようなパートナーと共同構築しながら、なぜそのように作られているのかという背景まで学ぶのです。それこそが、モデルの最適化につながる重要なポイントなのです。Vanguard の取り組みと同様に、モデル ビルダーとパートナーが協働しスキルの有効化を進めます。そして重要なのは、ただモデル ビルダーを 2〜3 名確保するだけではなくそのアプリケーションをどう保有しどう継続的に改善していくかという視点です。例えば、プロダクト オーナーは誰か、エンド ユーザーとどう関わるか、リクエストの受付フローなどそうした点も検討が必要です。ユース ケース立ち上げ時には将来的に継続的改善が可能なようにエンタープライズ ソリューションとして、全体像を整理することが重要です。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:13:39.3

完璧な答えですね。では次の質問に移ります。現在、御社でソリューションが稼働中です。

これまでに得られたメリットにはすでに少し触れていましたが、実装から得た学びを振り返ってみて、同様の導入を検討している方々にアドバイスをお願いします。

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:13:59.3:

では、まずメリットからお話しします。以前はすべて手作業によるレガシーなプロセスでした。現在はデータがモデルに直結しておりその効果を実感しています。手作業に費やしていた膨大な時間が不要になりデータとインサイトの可視性が大幅に向上しました。主要な業務の推進力の動向も容易に把握できます。それらに調整が必要なタイミングでフラグを設定できます。正確な見通しを立てるまでの流れがスムーズになりました。これが 1 つ目の大きなメリットです。ベース モデルには非常に満足しています。2 つ目の効果は、シナリオ モデリングの活用です。先ほども触れましたがこの機能は非常に気に入っています。

手作業に時間をかける必要がなくなったことで、アナリストは計画が破綻するリスクを想定できシナリオを事前に準備することができます。また急に「ボリュームが 10% 増えたらどうなるのか」、「採用形態を変えた場合はどうか」などの質問を会議中に聞かれても答えられます。その場でライブ デモを行い対応できるのです。以前は数時間から数日かかっていた対応が会議中に即座に対応可能になり意思決定が、ビジネス部門や社内の関係者によって完結するようになりました。

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:15:15.9:

学びについては、20 分は語れると思います。その中でも最大の教訓は、やはり「データから始まる」という点です。モデルの質は、入力するデータの質に大きく左右されます。だからこそ時間をかけて納得できるデータ精度を確保するべきです。今だけでなく 6 か月後や 1 年後、 1 年半後と将来を見据えた準備が成功の鍵になります。そしてもう 1 つの学びは、これは「旅」だという認識を持つことです。実装から 1 年半が経ちますが今も「旅の途中」という感覚です。エンド ユーザーがモデルを使い始めていますがその過程で課題もありました。できる限りの時間と労力をかけてエンド ユーザーに安心と期待を与えることが大切です。できることの可能性を示し、期待してもらうことが成功につながります。そしてシミーさんが言っていたパートナーから自社運用への引き継ぎについてですが。「完全な自社運用はまだ早いかも」と思う瞬間がありました。

 

シミー・メータ 氏 0:16:23.5:

完全に離れたわけではなくもちろん今も後方で支援しています!

 

アレックス・マケルウィー 氏 0:16:26.2:

移行期間がどうなるかを事前に考えておくことが重要です。そして、共に構築する過程を最大限に利用し、学ぶことです。その時間は、将来の成功を支える土台となります。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:16:37.7:

ありがとうございます。「旅」だというお話がありましたがシミーさんは、デロイトにおける Anaplan ワークフォース プランニングの専門家として多くのクライアントを担当されています。他のクライアントでは、「旅」をどう始めているのか、主なポイントについて教えてもらえますか?

 

シミー・メータ 氏 0:17:01.7:

まず、ワークフォース プランニングは非常に多分野にわたります。定義や目標の立て方は企業ごとに異なるかもしれませんが、必ず人事の複数の側面が関わりますし、場合によってはFP&A などのファイナンス部門の側面も含まれます。戦略チームやロケーション チームが関わることもあります。そこで、最初のステップとして、ワークフォース  プランニングの目標を定義することが非常に重要です。同時にワークフォース プランニングでやらないことも明確にすべきです。そして、その目標に合わせてビジネス メトリックスを整合させていく必要があります。アレックスさんは業務効率化について多く語ってくれましたが、最初に「旅」を始めたときは、適切な人材が、適切なタイミングで顧客と最適につながり、顧客満足度の向上を目指していました。顧客中心の文化が根付いている Vanguard にとって、非常に重要なことですが、他の企業では別のメトリックスが重視されるかもしれません。そのため、目指す姿と実際に推進したいメトリックスを結びつけることが、ワークフォース プランニング実装において極めて重要な土台になると考えています。

 

シミー・メータ 氏 0:18:20.6:

現在 ADO を活用していますが、ADO 導入前も含めて重要なのはデータ  オーナーを理解し、連携することです。なぜなら HRIS システムや FP&A チームのツール、ERP などにまたがってデータが分散しているケースが多いからです。Anaplan の他の導入と比べて始め方が大きく違うわけではありませんが、関係者の範囲が、圧倒的に広いという点が特徴です。現在あるクライアントとワークフォース プランニングを進めていますがそこではオペレーショナル プランニング、長期プランニング、組織モデリングも含まれます。打ち合わせには 100 人以上が参加することもあります。それだけ関心も高く、関係者も多いのです。だからこそ組織内で変革を進める際には、アライメントとチェンジ マネジメントが非常に重要です。

 

デジレー・デスーザ 氏 0:19:14.8:

完璧ですね。お時間が近づいていますので締めに入ろうと思います。今回のセッションが皆さまのお役に立てていれば幸いです。凝縮されたワークフォース プランニングの話でしたがさらに質問がある方は休憩時間に、アレックスさんやシミーさんにお声がけください。皆さんにワークフォース プランニングの全体像を少しでもお伝えし、考え方や、企業における実現方法について学びのきっかけとして持ち帰っていただければ幸いです。ご参加ありがとうございました。

登壇者

Vanguard
ワークフォース プランニング ケイパビリティ リーダー
アレックス・マケルウィー 氏

デロイト
プリンシパル
シミー・メータ 氏

デロイト
デジタルファイナンス & エンタープライズ パフォーマンス リーダー
デジレー・デスーザ 氏 (モデレーター)