フィリップ・ラルケ 氏 0:00:05.6:
皆さん、こんにちは。ストックホルムで開催のAnaplan Connect 2025 に登壇でき嬉しく思います。フィリップ・ラルケです。マーティン・パステナックとともに、Vestas 社におけるファイナンシャル プランニング変革の取り組みについてご紹介いたします。Vestas は 再生可能エネルギー分野における技術革新の最前線に常に立っています。今日は、意思決定と業績向上のためのファイナンシャル プランニングの変革について、また、どのようにビジネスを前進させているのかをお話しします。変革の内容に入る前にまずは、Vestas という会社についてご紹介したいと思います。そして、なぜ変革の必要性があったのかご説明します。Vestas は、 1898 年デンマークで鍛冶屋として始まりました。その後数十年にわたり当社は何度も形を変えてきました。農業機械や油圧式リフトを経て1987 年には風力発電に完全転換しました。今では、再生可能エネルギーの世界的なリーディング カンパニーとしての地位を確立しています。現在では 188 ギガワットを超える設備容量を世界中に展開しています。同時に、変革の必要性について模索していました。
フィリップ・ラルケ 氏 0:01:51.7:
まず Vestas の基本情報ですが、現在、世界中に 3 万 5 千人以上の従業員がおり、タービンの設置、組立、製造、保守を提供しています。当社は世界中で、5 万 6 千基以上のタービンを保守する責任を担っています。これは 188 ギガワットの設置容量に相当します。保守に関しては、一部 Vestas が行っています。毎日タービンを回転させることで、年間約 2 億 3,900 万トンの CO2 排出量の削減に貢献していると言えます。ご存じのとおり、世界は近年より不安定で、予測困難で、複雑さや曖昧さが増しています。それによって、様々な業界においてビジネスで事業運営上の課題が増えています。当社はグローバル企業として巨大な風力タービンを提供しています。サプライチェーンは極めて複雑で、常に新しい建設地へ納入しています。このような状況下で、不確実性がサプライチェーンにさらなる混乱をもたらしています。金利の上昇によりお客様の資金調達力が影響を受けています。インフレも進行しており結果として、お客様に対してより安価でクリーンなエネルギーの提供が難しくなっています。
フィリップ・ラルケ 氏 0:03:45.9:
こうした課題に対応するために変革の道を歩み始めました。当社では、今までのやり方をどのように変え。ビジネスの今のニーズにどう応えるかを数年前から検討していました。当時は、年次調達プランニングや戦略的プランを頼っていました。そして年次のファイナンシャル プランニングは部門ごとでサイロ化されていました。営業には営業のプランニングがあり生産には生産の、建設には建設のサービスにはサービスのプランニングがありました。それらが互いに連携していなかったのです。その結果、全体像をつなげることができず一貫したオペレーションが実現できていませんでした。さらに、統合的プランニングは Excel で実施されていました。まずはフェーズ 1 として高レベルな設計と問題定義を行う段階から始めました。次に詳細設計フェーズがあり、最後に実装と定着化のフェーズです。こちらのスライドにあるような流れです。高レベルの設計では、まず徹底的な現状分析から始めました。各部門の管理職やシニア リーダーに、インタビューを行いました。グループ全体だけでなく地域レベルでも実施しました。こうして、ファイナンシャル プランニングとパフォーマンスに関するリーダーのニーズを詳細に把握しました。
フィリップ・ラルケ 氏 0:05:25.4:
次に、ウォークスルー、インタビュー、アンケートによる分析をファイナンス部門全体に実施し、取り組むべき問題を明確に定義しました。こうして明確な課題認識を得ることができました。そして、それをもとに詳細設計と将来の運用モデルの検討に移りました。すべてが整ったら、実装のためのツールを検討しました。その詳細については、マーティンさんが後ほどご説明します。詳細設計の段階では、永続的な変化を確実にするために、高いレベルでの定着率を確保することも重要です。私たちの目指す未来像は、従来の 90 年代型の予算主導のプランニングから将来に適応した統合的なファイナンシャル プランニングへの進化を目指しました。シナリオ プランニングの推進までを迅速化することです。では、マーティンさんにバトンタッチします。
マーティン・パステナック 氏 0:06:23.1:
皆さん、こんにちは。マーティンです。本日は登壇でき、光栄です。Vestas に 10 年勤めており。今回の大規模な変革を主導してきました。今回は、どのようにこの変革を成功させたかをお話しします。また、ツール選定のプロセスとその選定理由についても触れます。当社は成功を収めましたが、それはツールの実装だけによって実現したわけではありません。変革に対するマインドセットの変化があったからです。当社はエンドツーエンドの視点でこの変革を進めてきました。ファイナンシャル プランニングは孤立したものではなくパフォーマンス マネジメント全体の一部として捉える必要があります。ビジネス部門とも深く連携しました。なぜなら、ビジネス部門もこの変革の影響を大きく受けるからです。変わるのはファイナンス部門だけでなくビジネス側の働き方も同様です。つまり、ビジネスが新しい現実に適応することを意味します。そのため、チェンジ マネジメントを展開や変革推進の中核をなす柱に置いたのです。一度きりのコミュニケーションではなく継続的な対話を重視しました。関係者やユーザーとの対話を続けました。それが、当社の変革の採用と定着を後押ししたのです。ソリューションへの理解と関与が深まりました。
マーティン・パステナック 氏 0:08:13.6:
次に、目指す姿について少しご紹介します。Vestas の目標は、完全に連携されたファイナンシャル プランニングの実現です。社内のファイナンス分野間の連携を強化し、プロセスも改善したいと考えています。さらに ファイナンシャル プランニングをオペレーション プランニングと連携したいと考えています。そうすることで、プランニングの整合性を確保します。以前のようなサイロ化された状態をなくします。これまでは ファイナンスのみでプランニングを実施してきましたが、今ではビジネスのインサイトを取り込み予測に活かしています。また、今回の変革の一環として18 か月のローリング予測も導入しました。フィリップも述べたように、以前は年度内の予測のみを見ていました。このローリング予測の方が、ビジネスに合致しており、また、当社は基本的にプロジェクト主導型のビジネスであることから、年度内よりも先を見据えた見通しを持つ必要があるのです。そうすることで、業績が年初に急落するような事態も避けられます。これを確立することも非常に重要でした。さらに、経営目標に対しての透明性も強化しました。リスクと機会を統一した視点で評価する仕組みを構築し、単一の予測数値に依存しないアプローチを開始しました。
マーティン・パステナック 氏 0:09:54.0:
予測の妥当性を確認し、それについて話し合うことで、よりよい対話ができます。さらに、予測の変動要因に注目することで予測を左右する要因を可視化しています。どんな出来事が予測にプラスまたはマイナスの影響を与えるのか、そうした点も対話の中で扱えるようにしています。これらすべてを通じて目指す最終的な成果は、当然ながら、オペレーション プランニングとの連携を強化し、品質を向上させることです。インサイト面では、経営陣への透明性をさらに高め、適切な意思決定を支援します。そしてもちろん、効率性にも目を向けプロセス ワークフローの改善と標準化を進めています。次に、新たなツールとその投資についても簡単に触れたいと思います。こちらは Vestas におけるファイナンシャル アプリケーションの全体像です。最下層に ERP システムがあり、その上に BW が配置され、BW の上部にリード コンソリデーションが配置されています。
マーティン・パステナック 氏 0:11:23.8:
実際には、エンタープライズ パフォーマンス マネジメント層は存在していませんでした。近い仕組みはありましたが要件を満たしていませんでした。そのため変革プロジェクトの一環としてツールの有効化についても検討する必要がありました。プロセスとマインド セットが変革の中心ですが、テクノロジーも重要な推進力です。ベンダー選定プロセスでは、いくつかの成功条件を定義しました。急速に変化している世界に対応できる柔軟でダイナミックなツールが必要でした。また、ビジネスの成長に対応できるツールでなければなりませんでした。加えて、ファイナンシャル プランニング エンジンが複数のモデルで構成されているためモジュラー型のアプローチを重視しました。モジュール単位で動くツールは実装を加速する助けとなりました。柔軟なツールのおかげでモデルをすぐに立ち上げて展開できました。そしてビジネスへの価値創出も早期に実現できました。ここで実装について、少しご紹介します。2024 年には完全なローリング方式の18 か月予測を P&L 全体に導入しました。8~9 種類のモデルをフル実装しすでに稼働させています。現在、約 220 名のユーザーがこのシステムをアクティブに使用しています。この短期間での展開が可能だったのもテクノロジーの力によるものです。
マーティン・パステナック 氏 0:13:14.4:
当社は、ベスト オブ ブリードのソリューションを探していました。成熟したソリューションであることも非常に重要な条件でした。他社でも同じ目的で使われていることを確認したかったのです。つまり、エンタープライズ レベルで活用されている実績が必要でした。エンドユーザーと開発者にとって優れたユーザー体験を提供していることも重視しました。結果的に Anaplan はこれらすべてを満たしており、今のところ非常に満足しています。
以上でプレゼンは終わりです。何かご質問はありますか?内容に関することでも、それ以外でも構いません。
参加者 0:13:59.1:
1 つ質問があります。現在 Anaplan の導入フェーズとのことですが第 3 フェーズのどのあたりまで進んでいるのでしょうか? Anaplan を使って、実際にビジネス モデルで何が実現されていますか?
マーティン・パステナック 氏 0:14:18.5:
これまでに導入したのは完全なローリング方式の P&L です。トップラインからボトムラインまですべて網羅しています。これを 1 年以内で実現しました。現在はキャッシュフロー、CAPEX、貸借対照表の実装を進めています。さらに Anaplan での目標設定機能も2025 年中に実現する予定です。つまり 2 年以内に展開全体が完了する見込みです。計画通りに成果を上げています。今までのキャリアの中で、多くのツールを使ってきましたが Anaplan の柔軟性とダイナミックさは群を抜いています。もちろん、失敗もありました。進めてみて、違うと気づいたこともあります。でも別の方向に切り替えることが、可能でした。実装のスピードアップや厳格なタイムラインの管理も行いました。そして、言っていることが実際やっていることであるとビジネス側にしっかり示せたのが何より良かったです。
フィリップ・ラルケ 氏 0:15:36.3:
さらに付け加えるとユーザー体験の面でも非常に優れています。従来のファイナンシャル ツールと比べて、ユーザーの満足度は高いです。最初から、直感的で使いやすいと好評です。その結果、日々の業務においてもより質の高いアウトプットが実現できています。ユーザーが必要とするものをそのまま提供できる仕組みになっています。もう大量の Excel や他のモデルで手作業する必要はありません。
マーティン・パステナック 氏 0:16:09.4:
現在は、既存モデルの継続的な改善と。新たなモデルの導入を並行して進めています。「これも使いたい」「これも追加できるか?」といった。積極的な声が上がっています。その結果、ツールの導入は非常に早く進み、ユーザー自身がその価値をしっかり実感しています。
参加者 0:16:34.9:
チェンジ マネジメントの観点から見て導入はスムーズでしたか?このツールの実装は簡単でしたか? はい、順調なスタートが切れたと思います。
マーティン・パステナック 氏 0:16:48.4:
経営陣も、ファイナンシャル プランニングを変える必要があると認識していました。トップからのメッセージは明確で「変わるしかない」というものでした。ローリング方式の 18 か月予測に移行する方針を決めそれを全社的に展開する必要がありました。特にビジネス部門にはその変化を確実に浸透させる必要がありました。もちろん、こうした変化は一夜では起きません。これは長期的なプロセスです。そのため、ビジネス パートナーと連携し現場と一緒に変化を推進しています。社内のリソースに限りがありすべてを自分たちで担うことはできません。だからこそ、担当のパートナーを通じて関係者に変化を提供しています。
フィリップ・ラルケ 氏 0:17:46.7:
当社は早い段階から共創という形を取り入れました。世界中のビジネス ファイナンス部門やグループ全体と連携しました。初期段階で関与してもらうことで異なる視点を共有できました。全員が同じ方向を見て同じ現実を理解することができました。その上で必要な妥協も受け入れながら実現したい変化のスピードとマインドセットの変革を進められました。ただ展開するだけでなく初期段階から関係者を巻き込むことが重要です。何が本当に必要かを理解する姿勢が大切です。
マーティン・パステナック 氏 0:18:40.5:
これは妥協のプロセスでもあります。すべての要望に細かく応えていたら前に進めなくなってしまいます。ある程度の譲り合いと調整が必要なのです。
フィリップ・ラルケ 氏 0:18:51.6:
たしかにそうですね。私たちは要望に耳を傾けましたがすべてに応えたわけではありません。今後もすべてに応えることはしない方針です。当初から「シンプルさを保つ」という明確な設計原則を掲げていました。組織全体のあらゆるニーズに対応することは目指していません。この方針は長い間一貫して守り続けています。では 最後にもう 1 件だけ質問をお受けできそうです。
参加者 0:19:17.7:
ありがとうございます、良いお話でした。まだ導入初期だと思いますがこのツールの投資対効果についてキャッシュイン/キャッシュアウトやその他の指標で何か実感はありますか?
マーティン・パステナック 氏 0:19:34.2:
良いご質問です。プロジェクト開始時を振り返ると経営層のサポートを得たときの提案は、コスト削減ではありませんでした。適切なタイミングで正しい意思決定ができるよう強固な基盤を築くことが目的でした。当社の主なお客様は経営層でありその意思決定を支援することが第一です。したがって ROI という観点ではまだ初期段階ですがすでにいくつかの恩恵は見え始めています。プランニングの質が向上し予測の説明力も高まりました。リスクと機会を透明性のある形で扱いそれを軽減できる力も強化されました。現時点での ROI の大きな成果は意思決定力の向上です。経営陣に対して、選択肢を提示できるようになり、戦略的な柔軟性が生まれました。将来に向けて、より良い判断が可能になりこれまでよりリアルタイムで状況を把握できています。従来のボトムアップ型予算プロセスでは約 5 か月もかかっていました。しかも最後には整合性の欠如により連携していない状態でした。
司会者 0:19:34.2:
フィリップさん、マーティンさん。すばらしいお話をありがとうございました。